(MMI ブログ1) 感動の ”しきい値” posted by KIMURA


30代半ばにしてバンドをはじめまして、ここ1年くらい「MMI(Musical Mechanical Instruments)」というバンドを製作しています。このバンドは全て機械で動くいわゆるマシンミュージックなんですが、最近ようやく完成したなーという感覚がキタのでいろいろ忘れないために備忘録としてこのテキストを書いております。

この「MMI」をつくり始めるにあたりいくつかの段階を経ているのですが、まず第一(のフェーズ)にマシン・ミュージックというものに触れたのがアートユニット「明和電機」のサポートスタッフとしてでした。大学を卒業する間際にひょんなことから土佐さんに声をかけていただいてそれから数年、明和電機にて機械製作とステージの作り方、運営の仕方など様々なことを勉強させてもらいました。

それから明和電機を経て東京KIMURA工場の設立、その後TASKOの設立、とかあるんですがその辺は置いといて、第二のフェーズ(きづき/きっかけ)になるのは、「Z-MACHINES」というプロジェクト。
これはZIMAというお酒のキャンペーンで最強のパーティ・ロボット・バンドをつくる!というお題で、72本の指を持ち、12個のピックを操るギターのマッハ、26本の腕を持つドラマーのアシュラと字面だけでもスゴそうな最強の演奏ロボットを作りました。

Squarepusher x Z-Machines – Making of 'Music For Robots' from Warp Records on Vimeo.

この時にスクエアプッシャーという人が楽曲を作ってくれたのですが、これが本当に素晴らしくて「音楽ってずるいなあ」と思いました。
TASKOではこれらの楽器製作を担当し、明和電機のノウハウなど考えうる全ての技術を集結して製作したのですが、そもそもマシン・ミュージックというモノは機械で動いているので機能を想定しないと設計が進まないわけです。言い換えると設計者はその機械の限界を作る前から想定していて「こういうことができるよね」と大体把握しているものと思います。

製作段階でも議論の的だったんですが、最強のパーティ・ロボット・バンドが演る音楽は人間が演奏できないような超絶プレイが正解なのか?!という話し合いが結構あって、そのような用途の想定をしながら製作を進めました。
ロボット・バンドというものはやはり音楽的には相当色物で、すごい演奏ができて当たり前、いい音楽を演奏するよりは「賑やかし」として機能する、みたいな感覚が世間一般の考え方でこれは製作チーム内でもどこかあったと思います。(少なくとも自分にはあった!)
前述の通り機械というのは用途を持って初めてこの世に成り立つので、それが動いた時の結果を理解しているはずなのですが、スクエアプッシャー氏はこちらの用途を全く無視した演奏や独自のロジックによる楽曲製作をしておりまして、楽器製作者ですら持っていた色物感を払拭する楽曲群に相当なウロコを目から落としました。このZ-MACHINES製作を受けて、マシン・ミュージック=色物という図式が自分の中から完全に崩れ去りました。
そして、こちらの意図や考えなどは軽々と飛び越え、瞬間的にエモーショナルな感覚を作れる「音楽」というものにものすごい嫉妬を覚えました。

機械製作は時間がかかりますからね..。

そして第三のフェーズ、
学研大人の科学マガジンオートマ・テ」。

オートマ・テはペンをもたせてx、y、,z軸をカムで動かし文字を書かせるオートマタ(自動人形)です。その紙面の作例製作を受けまして、オートマ・テをつかってギターを弾くことのできる「オート・オートマ・テ」という作品を作りました。
文字を書く動作で何作ろうかな…? と考えていたところに、ギターのピックの動作が思いついたのでピックを持つ「ピック・マ・テ」と棒を持っていてフレットを押さえることのできる「プット・マ・テ」製作したのですが、とにかくこの人たちの演奏能力が低い!
いろいろな曲が弾けるようにサーボモーターに改造し、PCによる制御を試みたのですが、何せオートマ・テで書ける文字サイズが 3cm角 ということもあり可動範囲が実に少ない!

このオート・オートマ・テの演奏能力はかろうじて、

・3本の弦のピッキング
・3本の弦×2フレットの押さえ

ができる仕様でした。

これで何が弾けるか相当悩みましたが、ベートーベンの月光(らしきもの)を弾かせました….あくまで「らしきもの」。

ただしこの製作を受けて自分としては様々な可能性を見出しまして、

まず一つの機械要素で複数弦、複数フレットを押さえる点。
マシン・ミュージックというものは基本的に大掛かりになっていく傾向があります。
これは音源(ノート)に対して一つの機械要素、という構造が多いためで、例えばシンバルを鳴らす機械をひとつ、太鼓を鳴らす機械をひとつ、のように安定した演奏を行うため、また様々な音色を用意するため複雑な演奏をやろうとするとその分の楽器装置を増やさなければならず、構成楽器のサイズが大きくなっていきます。
これはこれでマシン・ミュージックの醍醐味であり、ステージからの見栄えを考えると大きいほど良いのも事実ですし、これに関しては全く否定しません。もともとそういう楽器を自分もたくさん作ってきました。

このオート・オートマ・テ製作により最小の機械要素で最大の効果を生む、という設計をやってみたくなりました。そしてこれはギターというものを機械で演奏できるか?!の挑戦でもありました。
打楽器というものは言ってしまえば叩けば音は出ます。
ただし弦楽器は違います。特にギターなんてのは様々な太さの弦がありたくさんのフレットが細かく並んでいて、押さえ方や弦の弾き方で音が変わったりする非常にフィジカルな楽器です。
それらをひとつのピックで全弦を弾き、人間と同じようにフレットを押さえるようなものを作ってみたい、と思い一年前に製作を開始した次第です。

ギターから始まり、ベースドラムと作ってモーリさんというボーカル(?!)をつくり、一年かけてシステム、作曲方法、ステージングなど考えてきて、先日「あ、これ完成した!」
という感覚がきたので今回まとめてみました。

その過程でこのバンドについていろいろとわかってきたことがあるので下記列挙します。

●そもそもこのMMIとは何か?
簡単に言うとエモーショナルな感覚を引き出すための装置です。

例えば、

●昨夜の伝説のライブは今日は見れないのか?

コンディション、気温、光、体調、オーディエンスの具合もあるだろうし、ミュージシャンもその日の気分がありますね。全てが合致してこそのエモーショナル感覚と思うのですが、せっかく機械なのでこれを毎晩見れるようにしたいと考えてます。
※簡単に言うとですよ、、

音楽に欠かせない、「音」以外にもライブではその他の環境情報があります。
音楽にこれを追加することでエモ感トリガーを刺激できるのではないか?!
それらをすべて制御してみたいと思っています。

●ロボットと行うバンド活動
正直このMMIは演奏能力が低いです、、。
巷の方々が思い描くロボット・バンドのような超絶技巧はありません。
先日作った新曲「ロック3」という曲は実はレッドツェッペリンのrock ‘n’ rollのカバーですが
シーケンス上ではその通り打ち込んでるはずなのですが全くその通りに弾いてくれず、別物になってます、、、。
ただし、このボタンを押すとこの音がでる、という単純な装置より不確定な要素が多々あり、
一人で打ち込みをやっているよりはロボットと練習をして、対話し、MMIのアレンジになっていく感覚。これは今まで自分がやってきたマシン・ミュージックとは違い、バンドです。
自分では作らないようなリフや展開が勝手にできていくのが面白いと思ってます。


●感動のしきい値
そもそも「エモーショナルな感覚」とはなんでしょうか?
自分が今回音楽をモチーフに選んだのは美術のようにオーディエンスにある程度のリテラシーを要求するようなハイコンテクストなものではなく、一瞬で人の感覚をトリガーするために音楽というものがちょうど良かったのだと思います。
そして、音楽の面白いところは決してうまいだけがトリガーを入れるとは限らないところです。
例えば夏の潮騒や子供の歌声、川のせせらぎや全く言葉のわからない洋楽であってもトリガーがはいってしまうことはよくあります。

いくらMMIのテクニックが下手くそであっても、常に安定して演奏できる機械であるため
その空間の中で適時、適所、的確に音粒をインストールすることでそのトリガーを作ることができると考えます。そして、この「トリガー」こそがこのプロジェクトの最大の目的であるといえます。

このトリガーとはなんなのか?

その辺りは自分にもよくわかりません..。特に音楽理論や演奏方法についてあんまり詳しくないためなんとも言えないのですが、最近感じたのは展示空間で作曲をしているとその空間までもトラックの一部となって出来上がったフレーズと共に空間情報を切り取れるような感覚がありました。
この体験は自分の人工無能的なものによるものなのか詳しくは考察中ですが、感情のない機械が演奏する音楽に何かしらの情報が混入してくるのはとても不思議です。

なんとなくこの体験を以って「MMIは完成した!」ということを感じました。

今回の完成はあくまで「モノ」としての完成なので楽曲、音楽的にはまだまだ練習が必要ですね。安定して動作し様々な場所、シーンに対応できるようバンドとしてのグルーヴを高めたいと思います。

とりあえずメモ的に書いておきましたがまだまだ考察中の部分もおおいのでひとまずこのようなところで。

とにかく、あとは演るだけですね。

2015.11.30 KIMURA
(恵比寿ガーデンホール/Perfumery Organ Exhibition in Tokyo)での展示を終えて)